カンヌライオンズ2012受賞作 厳選の厳選〜心動いた編〜 | 不問日報-号外

2013年2月7日木曜日

カンヌライオンズ2012受賞作 厳選の厳選〜心動いた編〜

2013年2月2日(土)「第59回カンヌライオンズ 国際クリエイティビティ・フェスティバル入賞作品上映会」に参加してきました。審査員でもあるTBWA HAKUHODO・佐藤カズーさん( @kazoosato )の作品セレクト&解説付き。なのに無料ということで、ありがたく参加させていただきました。


カンヌライオンズの作品は、Web上のシェアでたまに映像を観る機会があります。ただ外国の作品は言葉がわからないこともあり、つかみきれないものも少なくありません。その点、本会は日本語字幕付き。ゆえによくわかる! 本当に無料でよいのでしょうか、という感じです。



ちなみに毎年行かれているという方からTwitterでお声がけをいただいたので、恒例行事のようです。来年も同様の会があるかもしれませんので、ご興味のある方は要チェックです。卓越した記憶力をもって、来年まで覚えておいてください。


佐藤カズーさんのセレクトからさらに自分的セレクト

カンヌライオンズは87カ国から約3万4000点の応募があり、日本も50点ほど入賞したようです。今回は複数ある部門の中から映像部門より、おまけ込みで(たしか)27作品の紹介がありました。その中でも、個人的に印象に残ったものを一部シェアします。

動画をつらつらと連ねていくのもあれですので、今回は「心動いた編」として以下3つ。

  1. Google "Dear Sophie"
  2. P&G "Best Job"
  3. CHIPOTLE "Back to the Start"

映像が流れ終わったとき、じわっときたものを貼っていきます。
(別途「アイデア編」も書こうと思っています)


1. Google "Dear Sophie"


生まれたばかりの娘のために dear.sophie.lee@gmail.com という Gmailのアドレスをつくり、お父さんが娘の成長記録をメールで送り続けます。いつか娘が成長したとき、その記録を一緒に見られたら・・という想いがこもったストーリーです。じわっときます。

親子のストーリーを数年にわたって実際に追いかけたもので、フィクションではない点が強いですね。日本でも同様のものが流れていました。日本人的には、以下日本版の方がよりしっくりくるかもしれません。自分もやってみたい、と思ってしまいました。



両親が、自分が子どもの頃、どれだけよろこびを感じ、愛情を注いでくれたのか。そんなことが大きくなってから知れたら、どれだけ感動するでしょう。タイムカプセルのような感動が待っていそうです。

お年をめしてから自分史、自分伝記を書かれる方もいらっしゃるかと思いますが、子ども時代は自分自身よりも両親の方が知っていますよね。そもそも記憶に残りませんし。そこで子どもの自分史を親がつくってあげる、なんてすてきだな〜と。

私の好きなサイトに「ダカフェ日記」というサイトがあるのですが、こちらは家族の写真記録が何年にもわたって日々記録されています。本にもなって、既に3冊出ています。

『続 ダカフェ日記』(集英社)より

赤の他人ですが、息子さんの成長やペットの死などを見ていると、不思議と感情移入してしまうんですよね。・・と、ちょっと横道にそれましたが、そんなことも思い出しました。


2. P&G "Best Job"


オリンピックの際に流れたP&Gの企業CMです。
オリンピックというと選手にフォーカスされがちですが、実は選手たちを産み、育ててきたお母さんこそ、一番がんばってきた存在なのではないか? そんなメッセージが強くこめられています。

映像では小さな子どもたちが成長し、やがてオリンピックの舞台で活躍していくストーリーが描かれます。最後にお母さんたちの見せる名状しがたい表情。それまでのお母さんの苦労が報われる、その瞬間が凝縮された場面が特に印象的でした。じわっときます。

CMのように活躍した選手像に限らず、今の自分自身を育ててくれた母や、自分に関わってくれた人に対する感謝も想起するCMでした。


3. CHIPOTLE "Back to the Start"


ブランデッドコンテンツ&エンターテインメント部門のグランプリ作品です。

CHIPOTLEはメキシカンのファストフードチェーン。素材をすべてオーガニックにすることを実践している企業です。曲はCOLDPLAYの"THE SCIENTIST"を吹き替えたものですが、映像を見ていると言わんとしていることは伝わってくると思います。大量生産大量消費の過ちに気づき、「Back to the Start(原点回帰する)」という企業姿勢を表現したストーリーです。

全米で最も注目される番組の一つで、ただ1度だけ放送されただけながら、米国にオーガニック・ムーブメントを引き起こすなど、社会的影響も強かったCMだったそうです。実際、なぜかマクドナルドに批判の矛先が向き、同社は豚の生産方法を改め、自然放牧に切り替えるとする会見を開くに至ったとか。

審査員たちは、ただ映像として優れているだけではなく、広告が世の中をよくしていく、そんなビジョンもこめてグランプリに決定したそうです。全会一致で決まったのは午前3時だった、と佐藤カズーさんはおっしゃっていました。(喧々諤々の議論を想像してしまいます)

解説してくださった佐藤さんは「スルメCM」と表現されていらっしゃいましたが、見れば見るほど、何かを感じます。ご覧いただいた方はどんな印象を持たれたでしょうか? 私たちの生活全般に関わる課題も見えてくるように思います。

数字や効率を追い求め続け、その先にあったものは何であったか?

このCMは私たち自身の生き方にも「原点回帰」の問いを投げかける作品です。
じわっときました。


<まとめ>気になった作品を振り返ることで自分が見える

いかがでしたでしょうか?
他にも印象に残った作品がいくつかありましたが、パッと思い出せる作品に絞りました。
最初の印象といいますか、直感は結構正しいことが多いですし。

家族愛や生き方に関わる作品が中心になりましたが、それは今の自分の心境を反映した結果なのかもしれません。いろいろ作品を観てみて、自然と自分の心に残ったものを振り返ると、自分というものがまた違った角度で見える。そんなことも感じました。


今回は「心動いた編」として3作品をご紹介しましたが、次回はなるほどおもしろいなと感じた「アイデア編」を書こうと思います(気力を喪失していなければ)。誰か私を鼓舞してください。鼓舞 Me!


<参考リンク>



<参考図書>
以下、実は読んでいませんが、かつては「カンヌ国際広告祭」だったものが、今は「カンヌ国際クリエイティブ祭」となり、「広告」という表現は使われなくなっています。

以下は実際持っていて、度々実施した本整理でも生き残っている本です。至高の家族アルバムという感じ。写真がいいですし、インテリアにもこだわりが垣間見えて、その辺がツボでもあります。